転記作業をAIで減らす手順 — コピペ整形を「指示」に変える

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転記作業をAIで減らす手順 — コピペ整形を「指示」に変える

定例会議の前日。あちこちのExcelから数字を拾い、報告用の管理表へコピペして、日付の形式を直し、フォントを整える。気づけば2時間が消えている。

転記作業そのものは難しくない。難しくないのに終わらない。この記事では、毎月発生する転記作業をAIに渡すための具体的な手順と指示文(プロンプト)、そして実際にやってみて崩れたパターンまでを書き残す。読み終わったら、明日の転記が1つ減る状態を目指す。

転記作業が終わらない理由は「形式のバラバラさ」にある

転記に時間がかかるのは、量が多いからではない。元データの形式が揃っていないからだ。

人間がこの「バラバラ」をひとつずつ吸収しながら手で写す——これが転記作業の正体だ。コンピュータとコンピュータの間に入って手作業でデータを橋渡しする「人間中間層」として消耗している状態と言ってもいい。

そしてこの「意味を読み取って揃える」部分こそ、生成AI(ChatGPTやClaudeなど)が最も得意な領域だ。ルールが完全に決まった移動はExcelマクロやPower Automateの領分だが、「ぐちゃぐちゃなものを意味で揃える」のはAIにしかできない。

AIに渡す前の準備は3つだけ

いきなり貼り付けると失敗する。先に次の3つを決めておく。

  1. 転記先のフォーマットを確定する:転記先の列名の並びを1行コピーしておく。これが指示文の核になる。
  2. ダミー化するものを決める:社名・人名・金額・メールアドレスは「A社」「田中」「9999」のような置き換え候補を先に決める。伏せれば安全と断定はできないので、外部AIに入れてよい範囲は会社の規程を先に確認しておくこと。
  3. サンプルを1行だけ手で作る:期待する完成形を1行だけ自分で書く。AIは「見本1行」があるだけで精度が大きく変わる。

転記をAIに渡す手順(5ステップ)

  1. 元データをコピーし、決めておいたダミー化を施す。
  2. 次の指示文に、元データと転記先フォーマットを貼り込む。

以下のデータを、指定のフォーマットに転記してください。

# 元データ(Excelからコピペ)
【ここに元の表を貼る】

# 転記先のフォーマット(この列順で出力)
【ここに転記先の列名の並びを貼る】

# 完成形の見本(1行だけ)
【自分で作ったサンプル行を貼る】

# ルール
- 出力はタブ区切り(TSV)。説明文は不要
- 列の対応が曖昧な項目は、勝手に埋めずに「要確認」と書く
- 日付は YYYY/MM/DD に統一する
- 金額は3桁区切りなしの半角数字に統一する

  1. 出力されたTSVをコピーし、Excelの空きシートに貼り付ける(TSVはセルに正しく分かれる。カンマ区切りだと金額の桁区切りで列がズレるので使わない)。
  2. 検算する。行数が元データと一致しているか、金額の合計が元と一致するか、SUMで突き合わせる。
  3. 問題なければ転記先に貼り付け、ダミー化した箇所を元に戻す。

実際に崩れたパターンと直し方

失敗例:空欄をAIが勝手に埋めた。 元データで空欄だった「担当者」列に、前の行と同じ名前が入っていたことがあった。行数と合計の検算は通ってしまうので気づきにくい。ルールに「空欄は空欄のまま出力する」と1行足してから再発していない。

ほかにも起きがちなのは次の2つ。

症状原因直し方
列が1つずつズレる元データ内のカンマや改行出力をTSV指定にする。それでもズレたら該当行だけ手で直す
行が減っている長い貼り付けの途中でAIが省略(「…以下同様」)した「省略せずに全行出力する」と明記。50行を超えたら分割して渡す

大事なのは、AIの出力を信じないこと。行数と合計の検算をワンセットにすれば、目視で全部見返すよりずっと速くて確実だ。

毎月の転記は「対応表」にして使い回す

一度うまくいった指示文は捨てずに残す。特に毎月同じ転記が発生するなら、「元データの列 → 転記先の列」の対応表を作って指示文に貼り込む形にしておくと、翌月はデータを差し替えるだけで済む。対応表の作り方は月次Excelの形式違いはAI用の対応表から片づけるに書いた。

元データが表ですらない場合——メール本文やExcelの備考欄に情報が埋まっている場合は、先に列へ分解する工程が要る。メール本文はAIに渡す列を決めてから表にする備考欄の情報を項目ごとの列に分解するが使える。

明日打つ現実的な一手

全部を一度に変える必要はない。まずは自分の転記作業のうち「最も精神を削ってくる1つ」だけを選ぶ。

  1. 明日その作業が来たら、転記先の列名の並びをコピーしておく。
  2. ダミー化して、上の指示文で1回だけAIに渡してみる。
  3. 検算が合えば採用。合わなければ、崩れた箇所をルールに1行足して翌月また試す。

1回で完璧にならなくていい。指示文は使うたびに賢くなっていく。転記を「手で写す作業」から「指示して検算する作業」に変えられれば、その時間は本来の「中身を考える時間」に戻ってくる。