「あちこちからコピペ」をなくす、バラバラな情報を申請書にまとめる方法
「あ、これ、チャットとメールとメモを全部見返さないと書けないやつだ……」
そう思った瞬間、一気に作業のハードルが上がりますよね。
田島くんからの「例の件、たぶん来週の火曜までに3件くらい必要っす」という雑なチャット。小林さんからの「見積書の表記が昨年度と異なります」という厳しいメール。そして、会議中に走り書きした手元のメモ。
これらを一つずつ見返して、Excelの申請書フォーマットに「件名」「期限」「数量」「備考」といった項目を転記していく。この「あちこちからコピペする作業」は、集中力を使う割に、やってる本人は「自分、何してるんだろう」と虚無感に襲われるものです。
この記事では、そんなバラバラな情報をAIに一括で放り込み、決まった形式(Excelにそのまま貼れる形)に整理させる具体的な手順をまとめました。明日、あなたの目の前にあるその「転記作業」を、AIに丸投げするための準備を整えましょう。
「どこに何があるかわからない」というストレスを解消する
情報の探し方に迷うとき、私たちはつい「キーワード検索」に頼ります。でも、チャットのログはなかなか見つからないものです。相手の言葉遣いが変わったり、検索したキーワードが少しだけ違ったりするだけで、ヒットしなくなるからです。
私がおすすめしているのは、検索の視点を「言葉」から「事象」に変えることです。
「あの資料どこだっけ?」と単語で探すのではなく、「あの件を決定した時のやり取り」や「あの数字が出てきたメール」という、情報の「意味」を意識して辿る。これだけでも、情報の集めやすさは変わります。
ただ、集まった情報はどれもバラバラです。チャットは口語体だし、メールは丁寧すぎるし、メモは断片的。これを人間が手作業で整理するのは、あまりに効率が悪すぎます。ここでAIの出番です。
失敗から学んだ「AIへの頼み方」の勘所
かつて私は、大量の案件リストを整理させようとして、AIに「このチャットの内容を、申請書用にきれいにまとめて」とだけ投げたことがあります。結果は散々でした。
AIは、私が求めている「項目」を勝手に解釈し、勝手に文章を要約してしまいました。Excelに貼りたいのに、妙に丁寧な「説明文」が返ってきて、結局それをまた手作業で削る羽目になったのです。
この失敗から学んだのは、AIに作業を頼むときは「いきなりきれいにして」と言わない、ということです。
「元データ(何を使うか)」「目的(何のために)」「出力形式(どんな形か)」「判断基準(不明な場合はどうするか)」の4点をセットで渡す。これが、実務で使える回答を引き出すための鉄則です。
具体的な手順:バラバラの情報を整理してExcelに流し込む
以下の手順で進めてみてください。
1. 元データの収集と「伏せ字」処理
まず、転記元となるチャット、メール、メモをすべてコピーして一つのテキストにします。ただし、そのままAIに貼り付けるのは危険です。
社外秘の情報や、具体的な個人名、金額などが含まれる場合は、「構造(関係性)」を保ったまま置き換えてください。
- 名前: 「株式会社〇〇の佐藤様」→「[取引先A]の[担当者B]様」
- 金額: 「1,250,000円」→「[金額X]」
- 日付: 「2024年4月1日」→「[日付Y]」
このように、前後関係がわかるように伏せ字にします。例えば「[担当者B]から、[日付Y]までに[金額X]の支払いを求められている」という形にしておけば、AIは「日付」と「金額」の相関関係を正しく理解できます。
※注意: 外部AIを利用する際は、必ず自社の情報セキュリティ規定を確認してください。「伏せ字にすれば絶対に安全」というわけではありません。会社のルールに従って、利用可能な範囲で判断してください。
2. AIへの指示(プロンプト)
以下のプロンプトをコピーして、チャット欄に貼り付けて使ってください。
# 目的
バラバラな形式のテキスト情報から、申請書作成に必要な項目を抽出し、Excelへ貼り付け可能な形式で整理してください。
# 出力形式
以下の項目を、タブ区切り(TSV)の形式で出力してください。
項目名は1行目に記述し、2行目以降にデータを並べてください。
項目:[案件名] [期限] [数量] [金額] [備考]
# 抽出ルール
1. 元データに該当する情報がない場合は、空欄(タブのみ)にしてください。
2. 日付は「YYYY/MM/DD」の形式に統一してください。
3. 金額は「数字のみ」にしてください。
4. 「不明」や「未定」といった言葉は使わず、情報がない場合は空欄にしてください。
# 元データ
[ここに、伏せ字にしたチャットやメールのログを貼り付ける]
3. Excelへの貼り付け
AIから返ってきた結果をコピーし、Excelの左上のセルを選択して貼り付けてください。タブ区切り(TSV)で出力させていれば、項目ごとに自動でセルが分かれます。
「方法A」と「方法B」どっちを使うべきか
情報の量や複雑さによって、使い分けが必要です。
- 方法A:1件ずつ丁寧に指示する(精度重視)
案件の内容が非常に複雑で、一言一句間違えられない場合は、1つの案件ごとにプロンプトを投げます。AIの「考えるリソース」が1件に集中するため、情報の読み飛ばしが減ります。
- 方法B:まとめてドサッと投げる(スピード重視)
今回紹介した、複数のチャットから一気にリストを作る方法です。内容が比較的単純で、件数が多い場合に適しています。
結論として、「判断に迷うような複雑な案件」は方法Aで、「事実関係の抜き出しがメインの案件」は方法Bで、と使い分けるのが、もっとも手戻りが少ないやり方です。
よくある失敗パターン
「指示通りにやったのに、うまく動かない」というときは、だいたい以下のパターンに陥っています。
- 「きれいにまとめて」と指示してしまう
前述の通り、AIは「きれいに」の定義を勝手に決めます。出力してほしい列名(項目名)を具体的に指定しないと、Excelに貼り付けにくい形式で返ってきてしまいます。
- 「不明な場合は『不明』と書いて」と指示してしまう
これ、意外とやってしまいがちですが、Excel作業では致命的です。「不明」という文字が入ると、後で数値計算(合計出しなど)をするときにエラーになります。ルールとして「空欄にする」と指定しておくのがコツです。
- コンテキスト(文脈)が足りない
例えば、チャットで「3個」と言っているとき、それが「申請する数」なのか「在庫数」なのかが分からないと、AIは迷います。元データには、せめて「何についての数字か」がわかる一言を添えておくようにしてください。
さて、これで「コピペ地獄」から抜け出すための型は見えたはずです。
まずは、今日溜まっているチャットの中から、一番単純なやつを一つ選んで試してみてください。
まあ、AIも完璧じゃないので、最後に自分の目で「数字がズレていないか」だけは必ず確認してくださいね。私も、さっきAIが出してきたリストをチェックして、一箇所だけ日付の解釈ミスを見つけました。結局、最後は人間の確認が一番重要なんです。
さて、コーヒーでも淹れ直して、残りの作業を片づけるとしますか。