顧客の長い要望メールを、迷いなく動ける「依頼内容リスト」へ整理する手順
「要約」だけでは、仕事は終わらない
取引先から届いた、長文のメール。
挨拶から始まり、過去の経緯が延々と続き、その後に「ついでにこれも」といくつか要望が添えられ、最後は「検討をお願いします」で締めくくられる。
そんなメールを読んだ後、「で、結局いま、何をすればいいんだっけ?」と画面の前で固まってしまったことはありませんか。
よくあるAIの使い方として、「このメールを要約して」と指示を出す方法があります。確かに、文脈を短くまとめることはできます。しかし、要約された文章を読んでも、次に自分が動くべきアクションや、誰に、いつまでに、何を確認すべきかといった「実務のタスク」までは、なかなか浮かび上がってこないものです。
要約は「何が起きたか(過去)」を整理する作業ですが、私たちが欲しいのは「何をすべきか(未来)」の整理です。
この記事では、長い要望メールを、そのままExcelやスプレッドシートに貼り付けて、チームへの指示出しや自分のToDoリストとして使える「依頼内容リスト」へ変換する手順をお伝えします。
データを渡す前に:情報の「隠し方」と「残し方」
まず、一番大事な話をします。社外のメールをそのままAIに貼り付けるのは、セキュリティの観点からリスクがあります。
会社によっては「外部AIへの入力禁止」という規定があるはずですので、まずは必ず自社のルールを確認してください。その上で、情報を渡す際は「固有名詞を構造を保ったまま置き換える」作業が必要です。
ここで、ただ単に「全部消す」のはおすすめしません。文脈が壊れてしまい、AIが正確なタスクを抽出できなくなるからです。
やってはいけない例(情報の欠落):
「〇〇株式会社の△△様から、××プロジェクトの件で、予算が〇〇円足りないという連絡がありました」
→ これだと、AIは「何が問題なのか」の重みを判断できません。
おすすめの置き換え方(構造の維持):
「[顧客A]の[担当者B]から、[案件C]の件で、[予算]が[不足]しているという連絡がありました」
このように、名前や金額を伏せつつ、「誰が」「何に対して」「どういう状態なのか」という関係性(構造)を維持したまま書き換えてください。金額も「1,234,567円」と書かずに「[金額:予算を下回る]」のように、その数字が持つ意味を添えて置き換えるのがコツです。
失敗するプロンプトと、成功するプロンプトの差
ここで、私が以前やってしまった失敗を紹介します。
以前、大量に届いた要望メールを処理しようとして、AIに「以下のメールの内容を箇条書きでまとめてください」とだけ指示を出しました。結果として返ってきたのは、メールの要点だけを並べた、きれいな「まとめ文」でした。
「……という要望がありました」「……についても触れていました」
読み物としては成立していますが、これでは結局、一項目ずつ読み返して「で、これは私がやるのか? 田島に振るのか?」と考える手間が残ってしまいます。
私は、やり方として以下の2つを比較しました。
- 方法A:メールの内容を要約させる(要点がわかるが、作業には繋がりにくい)
- 方法B:メールから「タスク」を抽出させ、特定の形式で出力させる(そのまま動ける)
結論として、実務で使うなら方法B一択です。
単なる要約ではなく、最初から「タスクの列」を決めて、その枠組みに情報を流し込ませる指示(プロンプト)を与える必要があります。
実践:そのまま使える「タスク抽出プロンプト」
以下のプロンプトをコピーして、メール内容を置き換えて使ってください。
ポイントは、最後に「TSV(タブ区切り)」形式で出力させることです。こうすることで、Excelやスプレッドシートへ「コピー&ペースト」するだけで、綺麗にセルに分かれて貼り付きます。
# 指示
あなたは優秀なプロジェクトマネージャーです。
以下の「顧客からの要望メール」を読み取り、次に取るべき具体的なアクションを整理して、タスクリストを作成してください。
# 条件
・「要約」ではなく、「誰が」「何を」「いつまでに」すべきかという「タスク」を抽出すること。
・メール内で期限が明記されていない場合は「不明」とすること。
・メールの内容から判断して、現時点で情報が不足しており、顧客に確認すべき事項(不明点)も別途リストアップすること。
・出力は、Excelにそのまま貼り付けられるよう、必ず「TSV(タブ区切り)」形式で行うこと。
# 出力フォーマット(列名)
タスク内容[TAB]実行担当者候補[TAB]期限[TAB]優先度[TAB]備考[TAB]確認すべき不明点
# 顧客からの要望メール
(ここに、固有名詞などを伏せ字に加工したメール本文を貼り付ける)
※プロンプト内の `[TAB]` という表記は、実際の入力時には「Tabキーでの空白」を意味しますが、チャット欄に貼り付ける際は、そのまま「タブ記号」を入れるか、あるいはAIに対して「列の間はタブで区切ってください」と指示すれば大丈夫です。
AIの回答をExcelへ。迷わず貼り付けるための手順
プロンプトを投げると、AIが以下のような形式で回答を返してきます。
タスク内容 実行担当者候補 期限 優先度 備考 確認すべき不明点
[製品B]の仕様変更の確認 企画部門 202X/MM/DD 高 [顧客A]の要望に基づく 変更後のコスト影響
[案件C]の追加見積もり作成 経理(小林さん) 不明 中 単価の再計算が必要 見積もり有効期限の確認
この出力結果をマウスでドラッグしてコピーし、ExcelやGoogleスプレッドシートの左上のセルを選択して「貼り付け」を行ってください。
Markdownの表形式(| --- | のような形式)で出力させてしまうと、Excelに貼り付けたときに一つのセルに全ての文字が詰まってしまうことがありますが、TSV形式を指定しておけば、列が自動的に分かれて展開されます。
もし、AIが表形式を無視して普通の文章で返してきた場合は、「表形式ではなく、タブ区切りのテキストデータとして出力し直してください」と一言送れば、すぐに修正してくれます。
最後のチェック:AIが「空気を読めなかった」部分を見つける
AIが作ったリストができあがったら、最後に必ず自分の目でチェックしてください。
特に以下の2点は、AIが苦手とする部分です。
- 「誰が」の判断
AIは「実行担当者候補」として、文脈からそれらしい部署や役割を提案してくれますが、組織内の微妙な役割分担(「これは田島に任せるべきか、それとも私がやるべきか」)までは分かりません。
- 「不明点」の解釈
プロンプトに「確認すべき不明点」の列を作らせていますが、これは非常に強力です。AIが「ここ、書いてあるけど矛盾してませんか?」とか「これ、具体的な日付がないですよ」と指摘してくれるからです。この列を見て、「あ、これは後で小林さんに確認しておかないとまずいな」と気づければ、この作業は成功です。
さて、これでリストの土台はできました。
私はこれから、このリストを元に、田島にチャットで指示を飛ばし、小林さんに数字の確認を依頼する作業に入ります。
明日、あなたの手元に届く長いメールも、この手順で「ただの作業リスト」に変えてみてください。