打ち合わせ前に、相手の「最近の動き」と「過去の経緯」をまとめた「事前準備メモ」を作る手順
打ち合わせ直前に「あ、あの件どうなったっけ」と焦るあなたへ
「明日の午前中、例の件で〇〇さんと打ち合わせを入れておいて」
部長からそんな無造作な指示が飛んでくる。あるいは、急にアジェンダだけが送られてくるチャット。
そんなとき、私たちは慌てて過去のメールを遡り、共有フォルダの議事録を漁り、さらに相手企業の最新ニュースを検索して……と、情報の海に溺れそうになります。
「相手は最近、どんな動きをしているのか?」
「前回、うちの担当者は何を引き受けて、何が保留になったのか?」
これらが整理できていないまま打ち合わせに臨むのは、地図を持たずに樹海に入るようなものです。逆に、準備に時間をかけすぎると、本来集中すべき「当日の議論」のための思考時間が削られてしまう。
この記事では、外部のニュース情報と、社内に眠っている過去の議事録やメモをAIに放り込み、短時間で「これさえ見れば当日の流れがわかる」という事前準備メモを作成する手順をお伝えします。
なぜ「情報の検索」だけで終わらせてはいけないのか
よくある失敗は、Googleでニュースを検索し、社内ログを読んで、「よし、情報は集まった」と満足してしまうことです。しかし、それは単なる「情報の断片」の収集に過ぎません。
打ち合わせに必要なのは、情報そのものではなく、「情報の相関関係」です。
「相手は新製品をリリースした(外部情報)。一方で、前回うちの会議ではその製品の導入コストが課題として残っていた(内部情報)。だから、今回はコスト面の話を切り出すべきだ(考察)」
この「AとBを繋げて、次に何をすべきかを見出す」プロセスこそが、事前準備の価値です。
以前、私はある重要案件の打ち合わせに、過去の議事録だけを読み込んで臨んだことがあります。社内の経緯は完璧に把握していたつもりでしたが、相手企業がその直前に組織改編を行い、意思決定のラインが変わっていたことを、ニュースから読み取れていませんでした。結果として、全く的外れな提案をしてしまい、現場に気まずい沈黙が流れるという、思い出すだけでも胃が痛くなる経験をしました。
情報の「点」を「線」にする作業をAIに手伝わせることで、こうしたケアレスミスを減らすことができます。
【実践】AIを使った事前準備メモ作成の4ステップ
準備の作業は、以下の4つのステップで進めます。
1. 外部情報の収集(ニュース・プレスリリース)
相手企業の公式サイトの「ニュース」や、検索エンジンで「(企業名) 動向」などで検索して出てきた記事をコピーします。全文を読み込む必要はありません。テキストを丸ごとコピーして、メモ帳などに一時的に貼り付けておくだけで十分です。
2. 社内ログの収集(過去の議事録・チャット)
社内の共有フォルダにある過去の議事録や、Slack/Teamsなどのやり取りをコピーします。ここでも、整形する必要はありません。バラバラな形式のままで大丈夫です。
3. データの「伏せ字」加工(重要)
ここが最も重要です。社内の機密情報や、特定の個人名、具体的な金額をそのままAIに渡すのはリスクがあります。情報を「構造」のまま、別の言葉に置き換えます。
- 固有名詞の置き換え: 「株式会社ABC」→「クライアントA」、「佐藤部長」→「先方責任者」
- 金額の置き換え: 「5,430万円」→「約5,000万円」または「予算規模X」
- プロジェクト名の置き換え: 「次世代型通信システム開発プロジェクト」→「プロジェクトα」
- 具体的な場所の置き換え: 「千葉県市川市の工場」→「地方の製造拠点」
これを行うことで、情報の前後関係(「予算が大幅に増えた」「拠点が変更になった」といった文脈)を保ったまま、セキュリティリスクを低減できます。
※ただし、外部AIを利用してよい範囲については、必ず事前に自社の情報セキュリティ規程を確認してください。
4. AIへの指示(プロンプト)の実行
加工したテキストを、後述するプロンプトと一緒にAIに投げます。
そのまま使えるプロンプトと出力形式
AIには、情報を「整理してまとめる」だけでなく、「打ち合わせの論点を見つける」という役割を与えます。
以下のプロンプトをコピーして、【 】の部分を書き換えて使用してください。
# 役割
あなたは優秀な経営企画アシスタントです。提供する「外部ニュース」と「社内ログ」を統合し、打ち合わせに向けた「事前準備メモ」を作成してください。
# 指示
1. 外部ニュースから、相手企業の最近の重要な動き(事業拡大、組織変更、新製品など)を抽出してください。
2. 社内ログから、前回までの経緯、決定事項、および継続中の課題を抽出してください。
3. 「外部の動き」と「社内の状況」を照らし合わせ、今回の打ち合わせで議論すべき「想定論点」を3つ提示してください。
4. 出力は、そのままExcelやスプレッドシートに貼り付けられるよう、以下の項目を持つTSV(タブ区切り)形式で出力してください。
# 出力項目(TSV形式)
項目名[TAB]内容
【外部の動向】[TAB](ニュースの要約)
【社内の経緯・課題】[TAB](過去ログの要約)
【想定される論点】[TAB](議論すべきポイント)
# 入力データ
## 外部ニュース
【ここにコピーしたニュースを貼り付ける】
## 社内ログ
【ここにコピーした過去のログを貼り付ける】
Excelへ貼り付ける際のコツ
AIの回答が「TSV形式」で出力されたら、そのテキストをコピーします。
Excelやスプレッドシートのセルを選択し、そのまま貼り付けてください。
Markdown形式の表(見た目がきれいな表)だと、セルの中にすべての文章が詰め込まれてしまい、後で見返すのが苦痛になります。TSVであれば、「項目名」の列と「内容」の列が綺麗に分かれるため、管理が格段に楽になります。
失敗を防ぐための「情報の渡し方」と「使い分け」
AIを使う際、よく陥る失敗パターンが「情報の詰め込みすぎ(情報の濁流)」です。
あまりに膨大なログを一度に渡すと、AIが重要な文脈を見落としたり、内容を端折ってしまったりすることがあります。
ここで、やり方の選択肢として「方法A」と「方法B」があります。
- 方法A:一括投入型
ニュースとログを一度に一つのプロンプトで渡す。
- 向いているケース: 打ち合わせが数十分後で、とにかく概要をパッと掴みたいとき。
- 方法B:ステップ実行型
まず「ニュースだけ」を渡して要約させ、次に「ログだけ」を渡して要約させ、最後に「その2つを統合して論点を考えて」と指示する。
- 向いているケース: 重要な商談や、数週間後の大きな会議に向けた、精度の高い準備をしたいとき。
結論として、私は「方法B」を推奨します。
AIは一度に処理する情報の密度が高すぎると、細かい「条件」や「ニュアンス」を無視する傾向があります。手間は少し増えますが、一回ずつステップを踏むほうが、結果として「使えるメモ」が出来上がります。
次のステップに向けて
AIによる事前準備は、あくまで「下書き」です。
AIが出してきた「想定される論点」を見て、「あ、これは前回話したことと矛盾しているな」とか「このニュースは、うちの製品にはあまり関係ないな」と、あなたの経験でフィルターをかける作業が最後の一手として必ず必要になります。
「AIが作ったから完璧だ」と思わず、「AIがこれを見つけてくれたから、自分はここを深掘りしよう」というスタンスで使うのが、一番賢い活用術です。
さて、私はこれから、さきほどAIが吐き出した「想定論点」を元に、部長への報告用スライドの構成を練る作業に戻ります。これもまた、少し面倒な作業ですが……。