走り書きのメモをAIで『会議のアジェンダ』に。思考を整理して議論の準備を整える
「何を決めるか」が抜けたメモは、アジェンダにならない
この記事を読み終える頃には、会議の前に頭の中でぐるぐる回っている断片的なアイデアや、走り書きのメモを、そのままAIに放り込んで「議論すべき論点」が整理されたアジェンダへと変換できるようになります。会議の準備に「さて、何から書こうか」と白紙の画面を眺める時間は、もう必要ありません。
会議の準備で一番しんどいのは、文章をきれいに書くことではありません。「結局、この会議で何を決めれば、参加者が納得して帰れるのか」という構造を組み立てることです。
僕自身、以前は会議の前にノートを眺めては、「あ、これも話さなきゃ」「それと、あの件も……」と、ただの「話したいことリスト」を作っていました。それだと、会議が始まった途端に話が脱線したり、結局「検討します」で終わったりして、参加者の貴重な時間を奪うことになります。
これを防ぐために、AIを「清書ツール」としてではなく、「構造化ツール」として使う方法をまとめました。
思考のゴミを「議論の設計図」に変える3ステップ
走り書きのメモからアジェンダを作る際、いきなり「アジェンダを作って」と指示するのは避けてください。AIは空気を読むのが得意なようでいて、実は「目的」が抜けると、それっぽいけれど中身のない、ありきたりな項目(「1. 挨拶」「2. 進捗報告」「3. その他」など)を生成してしまいます。
以下の3つの手順で進めるのが、もっとも手戻りが少ない方法です。
1. 素材を書き出す(言語化の精度は低くていい)
まずは、頭にあることをすべて書き出します。箇条書きでも、単語の羅列でも、自分向けの備忘録でも構いません。
2. AIに「構造」を指示する
次に、そのメモを「何を決めるための会議なのか」という目的と一緒にAIに渡します。
3. 出力されたものを「人間」が微調整する
AIが出したものは、あくまで「たたき台」です。特に「誰が、いつまでに、何を」という責任の所在は、AIには判断できません。
具体的にどう変換されるのか、イメージを整理しておきます。
| 状態 | メモの内容(例) | AIによる変換後のアジェンダ項目(例) |
|---|---|---|
| 走り書きメモ | ・新製品の納期が遅れそう<br>・資材不足が原因<br>・代替案の検討が必要<br>・予算追加も視野に | 【議題】新製品納期遅延への対策決定<br>1. 現状報告:資材不足による影響範囲(5分)<br>2. 対策案の比較:代替資材の採用 vs 納期調整(15分)<br>3. 予算措置の要否と判断基準の確認(10分)<br>【ゴール】代替案の方向性を決定し、次工程の担当を決める |
【実践】そのまま使えるプロンプトと手順
実際に使う際は、以下のプロンプトをコピーして、[ ] の部分を書き換えて使ってください。
# 役割あなたは経験豊富なファシリテーターです。
断片的なメモから、会議の目的を達成するための構造的なアジェンダを作成してください。
# 会議の目的
[ここに「〇〇の決定」「〇〇の進捗確認」など、何をゴールにするかを書く]
# 参加者
[必要であれば、関係部署や役職などを書く。例:営業部、製造部、経理部]
# 元となるメモ
[ここに、走り書きのメモをそのまま貼り付ける]
# 出力形式
以下の構成で出力してください。
1. 会議のゴール(この会議が終わった時に、どういう状態になっていれば成功か)
2. 議題一覧(「項目名」「議論のポイント」「想定時間」をセットにする)
3. 事前に準備しておくべき情報(参加者に事前に読んでおくべき資料や、持参すべきデータなど)
使い方のアドバイス
もしメモが極端に短い場合は、プロンプトの「会議の目的」の部分に、「このメモから推測される、会議で議論すべき論点をいくつか提案してください」と一言添えると、AIが思考の補助をしてくれます。
情報の「伏せ方」のルール:会社に怒られないために
ここで一つ、実務上の重要な注意点があります。社内の機密情報や、具体的な金額、顧客名が含まれるメモをそのままChatGPTなどの外部AIに貼り付けるのは、セキュリティ規定的にNGなケースがほとんどです。
「伏せれば安全」とは言い切れませんし、必ず事前に自社の情報セキュリティ規定を確認してください。その上で、AIに「文脈(コンテキスト)」を理解させつつ、情報を隠すには、「構造を保ったまま置き換える」のがコツです。
× ダメな例(情報を消しすぎて文脈が壊れている)> 「〇〇株式会社のAプロジェクトの予算が1,200万円足りない件について」
> → 「予算が足りない件について」
> (これでは、AIは「どの程度の規模の、どんな性質の不足か」が判断できず、的外れな提案をしてきます)
> 「顧客X社のプロジェクトYにおける、予算額Zに対しての不足分について」
> 「主要取引先における、計画予算比で10%程度のコスト超過について」
このように、「A社」を「顧客X」に、「1,200万円」を「予算額Z」や「10%の超過」に置き換えます。数値の「大小関係」や「割合」などの論理的な意味合いを残しておくことが、AIから質の高い回答を引き出すポイントです。
迷ったらどっち?「項目整理型」と「目的追求型」の使い分け
アジェンダを作る際、AIへの指示の出し方で2つのアプローチがあります。状況によって使い分けてください。
- 方法A:項目整理型(メモの内容を整理したいとき)
「このメモの内容を、論理的な順序に並べ替えてください」と指示します。
使い時: すでに話すべきことは決まっていて、単に会議の進行順(アジェンダの並び)を整えたいとき。
- 方法B:目的追求型(何を決めるべきか迷っているとき)
「このメモの内容から、会議で解決すべき課題(論点)を抽出してください」と指示します。
使い時: アイデアは出ているが、それがどう議論に結びつくのか、何が決まれば会議が成功と言えるのかが見えていないとき。
結論として、「会議の準備」として使うなら、迷わず「方法B」から入るべきです。アジェンダの順番を整えることよりも、「議論の焦点を絞ること」の方が、会議の生産性には圧倒的に寄与するからです。
よくある失敗:「AIにお任せ」が一番遠回りな理由
僕が以前、大きなプロジェクトのキックオフ会議の準備をAIに丸投げしようとした時のことです。「こんなメモがあるから、いい感じのアジェンダを作っておいて」と、かなり雑な指示を出してしまいました。
返ってきたのは、「1. 挨拶、2. プロジェクトの概要、3. スケジュールの確認、4. 質疑応答」という、教科書通りの、しかし何の魂もこもっていないアジェンダでした。これでは、部長の「いい感じにやっといて」という期待には応えられません。
結局、AIが出した「当たり障りのない項目」を一つずつ見直して、「いや、ここはスケジュール確認じゃなくて、リソースの確保について議論すべきなんだよな」と、自分で書き直す作業に時間がかかってしまいました。
AIは「整理」は得意ですが、「意思決定の重み」は理解できません。AIが出してきたアジェンダの各項目に対して、「これで本当に、今日決めるべきことが決まるか?」と、自分自身で問いを投げかけるプロセスを絶対に飛ばさないでください。
さて、明日の会議の準備、まずは手元のメモを「顧客X」と「予算Z」に書き換えるところから始めてみましょうか。僕はこれから、溜まっている経理の小林さんからの修正依頼を片づけなければなりません。