ファイルが二重管理になる前に。AIに『新しい置き場所ルール』を案出しさせる
バラバラになったファイル名と、どこに何があるか分からないフォルダ構成。この「ファイル管理の混乱」を、AIに現状のリストを読み込ませることで、組織の実態に即した「命名規則」と「階層構造」のドラフトとして書き出させます。この記事を読み終える頃には、手元のデスクトップの混沌を整理するための、具体的な指示書が手元にあるはずです。
整理を始める前に:私がやらかした「情報の丸投げ」
以前、プロジェクトの資料が山積みになったとき、私は焦って「このファイルリストを整理して」と、クライアント名や具体的な金額、未公開のプロジェクト名がそのまま入ったリストをChatGPTに放り込んだことがあります。
結果として、AIはそれなりに綺麗なルールを提案してくれましたが、後になって「これは完全にセキュリティポリシー違反だ」と冷や汗をかきました。外部のAIに、会社の機密情報をそのまま渡していいのか。その判断を飛ばして「便利さ」だけを優先したのが、私の大きな失敗でした。
必ず、社内の情報セキュリティ規定を確認してください。 その上で、以下の手順で「情報を隠しながら、構造だけを渡す」作業を行ってください。
ステップ1:現状の「カオス」をテキスト化する
まずは、整理したいファイルがどのような状態にあるか、AIに教えるための「素材」を作ります。
一番簡単なのは、エクスプローラーで対象のファイルを選択し、[ホーム]タブの[パスのコピー]をクリックして、Excelやメモ帳に貼り付ける方法です。ファイル数が多い場合は、以下の手順で一気にリスト化するのが効率的です。
1. 整理したいフォルダを開く。
2. フォルダのアドレスバーに cmd と入力してEnterを押す(コマンドプロンプトが開きます)。
3. dir /b > list.txt と入力してEnterを押す。
4. そのフォルダ内に生成された list.txt を開くと、ファイル名の一覧が手に入ります。
ステップ2:AIに渡すための「情報の伏せ方」
リストが手に入ったら、そのままAIに渡してはいけません。AIが必要としているのは「具体的な中身」ではなく、「ファイル名にどのような要素(日付、案件名、版数など)が含まれているか」というパターンです。
以下の表のように、固有名詞や数字を、構造を維持したまま「仮の名前」に置き換えてください。
| 元のファイル名(例) | AIに渡すための書き換え後 | 置き換えのポイント |
|---|---|---|
| 20240510_株式会社ABC_見積書_v1.pdf | 20240510_ClientA_Estimate_v1.pdf | 日付と版数の形式は残す |
| プロジェクトX_予算計画_1500万円.xlsx | ProjectX_Budget_1500.xlsx | 金額の桁数は残す |
| 田中様向け_打ち合わせ議事録_240512.docx | PersonA_MeetingMinutes_240512.docx | 属性(誰向けか)を残す |
このように、「日付」「案件コード」「種別」「版数」といった情報の並び順(フォーマット)がわかる状態にすれば、AIは正しくルールを推測できます。
ステップ3:AIへの指示(プロンプト)
準備ができたら、以下のプロンプトをコピーして使ってください。`[ ]` の部分は、自分の状況に合わせて書き換えます。
# 目的バラバラになったファイル管理を改善するため、新しい「ファイル命名規則」と「フォルダ階層構造」の案を作成してください。
# 背景
現在、共有フォルダ内のファイル名がバラバラで、必要なファイルを探すのに時間がかかっています。また、同じようなファイルが複数の場所に保存される「二重管理」が発生しています。
# 現在のファイル名リスト(一部抜粋)
[ここにステップ2で作成した、書き換え済みのリストを貼り付ける]
# 制約条件
1. 誰もが迷わずに、かつ入力負荷が低くなるルールにすること。
2. フォルダ階層は深くなりすぎないこと(最大3〜4階層まで)。
3. 「最新版」がどれか一目でわかる仕組みを取り入れること。
4. 以下の3つの観点から提案してください。
- 命名規則(例:日付_案件名_種別_版数.ext)
- フォルダ構成(例:01_進行中案件 / 02_完了案件 / 03_共通資料)
- 運用ルール(例:版数はv1, v2...と付ける、古いものはArchiveフォルダへ移動するなど)
# 出力形式
Markdown形式で、実務ですぐにマニュアル化できるような構成で出力してください。
「一括整理」か「ルール作り」か:2つのアプローチ
AIを使う際、状況によって使い分けるべき2つの方法があります。
- 方法A:現状のリストから「パターン」を抽出する(ボトムアップ型)
今回紹介した方法です。今のカオスな状態をそのままAIに見せて、「今の傾向を汲み取った上で、もっとマシなルールにして」と頼みます。現場の既存の習慣を壊したくない場合に適しています。
- 方法B:理想の業務フローから「型」を作る(トップダウン型)
現在のファイルリストは渡さず、「うちは製造業の企画部門で、案件ごとに設計図、見積書、契約書が動きます。これらを管理する理想のフォルダ構成と命名規則を考えて」と頼みます。組織変更直後など、ゼロから作り直したい場合に適しています。
迷ったら、まずは方法Aで試してみてください。今の自分たちの「癖」をAIに理解させるほうが、現実的なルールになりやすいからです。
こうするとうまくいかない:AIの「完璧主義」という罠
AIにルールを作らせると、時々「あまりにも厳格で、人間には守れないルール」を提案してくることがあります。
例えば、「すべてのファイル名に、作成者名、作成日時(秒単位)、プロジェクトコード、文書分類コード、重要度フラグを必ず含めること」といったルールです。これでは、ファイル一つ作るたびに作業が止まってしまい、結局誰も守らずに、また元のカオスな状態に戻ってしまいます。
AIの回答が返ってきたら、必ず「これ、忙しい事務担当者が毎日やるのは現実的かな?」という視点でチェックしてください。もしルールが複雑すぎると感じたら、「もっと入力の手間を減らした、簡易的なルールに修正して」と追加で指示を出しましょう。
整理すべきファイルが多すぎて、どこから手をつければいいか分からない。そんなときは、まず「ファイル名のリスト化」だけを今日中に終わらせる、と決めてしまうのがコツです。リストさえできれば、あとはAIに丸投げする準備が整ったも同然ですから。
さて、私のデスクトップにある「temp」という名前のフォルダも、そろそろこの方法で片付けようと思います。