「いい感じに」を確認質問に変えて手戻りを防ぐ
金曜夕方に「来週の会議用に、いい感じにまとめて」と頼まれる。受け手は、何をどこまで作ればよいのか分からないまま、Excelを開き、スライドを整え、月曜の朝に「もっと要点だけでよかった」と言われる。手戻りは能力不足より、着手前の確認不足で起きることが多い。この記事では、曖昧な指示を作業前の確認質問に変える手順を書き残す。
手戻りが起きる理由は「推測で埋める空欄」が多いから
「いい感じに」「適当に」「急ぎで」は便利な言葉だが、作業指示としては空欄が多い。空欄を受け手が推測で埋めるほど、完成後にズレが見つかる。
| 空欄 | よくあるズレ | 起きる手戻り |
|---|---|---|
| 目的 | 報告用か、判断用か、共有用か | 詳細すぎる、または粗すぎる |
| 期限 | 今日中か、会議前日でよいか | 優先順位を間違える |
| 分量 | 1枚か、10枚か、箇条書きか | 作り込みすぎる |
| 体裁 | Excel、スライド、チャット本文 | 作り直しになる |
| 除外事項 | 触れない話題、未確定情報 | 余計な説明が混ざる |
指示を出す側の頭の中には、完成図がある。だが、それが相手に渡るときは「いい感じに」という低解像度の言葉になる。受け手はその間に入り、作業しながら翻訳する「人間中間層」になる。ここをAIに任せると、いきなり成果物を作らせる前に、確認すべき空欄を洗い出せる。
AIに渡す前の準備は3つだけ
曖昧な指示をそのままAIに貼る前に、次の3つを整える。
- 受け取った指示を原文で残す:「いい感じに」のような曖昧な表現も消さない。どこが曖昧かを見つける材料になる。
- 自分が推測した内容を分けて書く:「たぶん役員向け」「A4一枚かもしれない」のような推測は、事実と混ぜない。
- 伏せる情報を決める:社名・人名・金額・案件名は「A社」「B部長」「9999万円」「案件X」のようにダミー化する。伏せれば安全と断定はできないので、外部AIに入れてよい情報の範囲は会社の規程を先に確認しておくこと。
特に確認質問を作るだけなら、実データを丸ごと入れる必要はない。会議名や取引先名を伏せても、「何を確認すべきか」は十分に整理できる。
曖昧な指示を確認質問に変える手順
- チャットやメールで受け取った指示をコピーし、社名・人名・金額などをダミー化する。
- 次の指示文をAIに貼り、確認質問だけを作らせる。
上司から次の指示を受けました。着手前に確認すべき質問を作ってください。
# 受け取った指示
【ここに指示を貼る】
# 私の推測
【分かっていること、たぶんこうだと思うことを書く】
# 出力形式
- 表で出力する
- 列は「確認すること」「質問文」「選択肢」「確認しない場合のリスク」
- 質問は5個以内
# ルール
- 推測で空欄を埋めない
- Yes/No または選択式で答えられる質問にする
- 目的、締切、分量、体裁、除外事項を優先する
- 不明な点は「要確認」と書く
- 出てきた質問をそのまま送らず、相手が答えやすい順に並べ替える。忙しい相手には「A/B/Cから選んでください」と出すほうが返事が早い。
- 返答を受け取ったら、AIに作業指示書へ整えさせる。
次の確認結果をもとに、作業者が迷わず着手できる指示書にしてください。
# 元の指示
【元の指示】
# 確認結果
【相手からの回答】
# 出力形式
1. 目的
2. 完了条件
3. 作るもの
4. 含める項目
5. 含めない項目
6. 期限
# ルール
- 回答にない内容を推測で補わない
- 未確定の項目は「要確認」と明記する
- 作業者向けに短い文で書く
- 作った指示書を、相手に「この理解で進めます」と送る。ここでズレが見つかれば、修正は数分で済む。
AIの出力はここを確認する
AIが作った確認質問は、数が多ければよいわけではない。送る前に次の観点で検算する。
- 質問数:5個以内になっているか。多すぎると相手が返信を後回しにする。
- 答え方:Yes/Noか選択式になっているか。「どんな感じですか」はまた曖昧な返事を呼ぶ。
- 固有名詞:A社、B部長、案件Xなどのダミー名が混ざっていないか。相手に送る前に必要な範囲だけ戻す。
- 期限と完了条件:「いつまでに」「何ができたら完了か」が入っているか。
- 推測の混入:AIが「役員向けと思われる」など、元指示にない前提を足していないか。
特に見るべきは、質問文が相手に負荷をかけすぎていないかだ。「目的を教えてください」より、「今回の目的は A:報告、B:判断材料、C:周知 のどれに近いですか」のほうが返ってきやすい。
実際に崩れたパターンと直し方
失敗例:AIが勝手に完成形を決めた。 「来週の会議用にまとめて」という指示をAIに渡したところ、AIはスライド10枚の構成案を作った。しかし実際に必要だったのは、チャットに貼る3行の要点だった。原因は、確認質問を作らせる前に「資料化してください」と頼んだことだ。以後は最初の出力形式を「確認質問の表」に固定し、「成果物はまだ作らない」と明記した。
| 症状 | 直し方 |
|---|---|
| 質問が抽象的で返事が来ない | 「Yes/No または選択式」と指定し、選択肢を付ける |
| AIが前提を補ってしまう | 「回答にない内容を推測で補わない」をルールに入れる |
| 質問が10個以上出る | 「5個以内」「目的・締切・分量・体裁・除外事項を優先」と絞る |
| 相手に送る文が硬すぎる | 最後に「社内チャット向けに短く」と整える |
手戻りを減らす目的なら、AIに最初から完成物を作らせないほうがよい。まず確認質問を作り、返答を得てから作業指示書にする。この順番を守るだけで、推測で走る時間をかなり減らせる。
関連する作業
曖昧な依頼を受けた後、実際のタスクに落とすところは曖昧な依頼をタスクの指示書に変えるが近い。会議前の走り書きから論点を整理する場合は走り書きメモは会議前にAIで論点へ整えるも使える。
明日打つ一手
- 明日受け取った曖昧な指示を1つ選び、固有名詞と金額をダミー化する。
- 上の指示文で確認質問を5個以内にする。
- そのうち本当に必要な3個だけを、選択式にして相手へ送る。