面倒な事務作業をAIに渡す実務メモ(Excel・会議・社内情報の整理が中心)コラム

面倒な事務作業をAIに渡す実務メモ(Excel・会議・社内情報の整理が中心)コラム

「あ、これ、手入力でExcelに 옮す(うつす)の、嫌だな……」

金曜日の午後、あるいは締め切りが迫った深夜。チャットツールに流れてくる、断片的で、しかも表記がバラバラな指示やメモ。
「田島君のチャットだと、タスクが『来週中』だったり『金曜まで』だったりして、結局いつなのか分かりにくい。でも、これをそのまま管理表にまとめなきゃいけない」
「会議の議事録は取ったけれど、結局『誰が・何を・いつまでに』やるのかを整理するだけで、また30分溶けていく」

そんな場面、一度や二度ではないはずです。
管理職やリーダーになると、こうした「情報の整理」という、一見すると地味で、かつ集中力を削ぐ作業が、驚くほど大量に降ってきます。

私は以前、この「情報の整理」を、根性で手入力して解決しようとしていました。しかし、ある時、経理の小林さんから「この日付、先週の会議メモと違いますよ」と、表記の揺れと入力ミスを厳しく指摘されたんです。数字や日付を、脳内の「解釈」を通しながら手で打つのは、思っている以上にミスを生みます。

この記事では、そんな「バラバラなテキスト情報を、Excelにそのまま貼れる形の綺麗なデータに変換する」ための、AIへの具体的な頼み方をまとめました。

最初に:守らなければならない「境界線」

作業に入る前に、これだけは絶対に守ってください。
AIを使う際、最も恐ろしいのは「社内情報の漏洩」です。

まず、会社で「生成AIの利用規定」がどうなっているか、必ず確認してください。「機密情報は入力禁止」というルールがあるなら、どんなに便利でも、そのままのデータをAIに投げてはいけません。

もし、規定が「情報の加工を前提とした利用」を認めている、あるいは「個人や社名さえ消せばOK」としている場合は、以下の手順で「情報の匿名化」を行ってください。

  1. 固有名詞の置き換え: 「株式会社〇〇」→「取引先A」、「佐藤部長」→「上長」、「プロジェクト・ゼウス」→「プロジェクトX」
  2. 金額の丸め込み: 「1,254,800円」→「約125万円」または「X円」
  3. 日付の一般化: 具体的な日付が機密に触れるなら、「10月5日」→「〇月〇日」

「これくらいなら大丈夫だろう」という、自分なりの判断が一番危ない。迷ったら、情シスの及川さんに「これ、加工してAIに入れてもいいですかね?」と、一言聞くのが一番の近道です。

「バラバラな情報」を「構造化」する思考法

AIに「このメモを整理して」とだけ頼んでも、期待通りの結果は返ってきません。
AIは、あなたが「どんな表を作りたいか」を知らないからです。

私が辿り着いた結論は、「AIに思考させるのではなく、出力形式(フォーマット)を指定する」というやり方です。

特にExcelへ貼り戻す作業なら、Markdownの表形式(見た目が綺麗な表)で出力させるよりも、TSV(タブ区切り)形式で出力させるのが、実務上の正解です。Markdownの表をコピーしてExcelに貼ると、セルの結合が崩れたり、余計な記号が入ったりして、結局また手直しすることになるからです。

以下に、私が実際に使っているプロンプトの型を示します。

実践:情報の整理用プロンプト

チャットのログや、殴り書きのメモを、タスク管理表にするための指示文です。

# 役割
あなたは優秀な事務局スタッフです。
提供する「未整理のテキスト」から、タスク管理に必要な情報を抽出し、指定の形式で構造化してください。

# 出力形式
以下の項目を持つTSV(タブ区切り)形式で出力してください。
Markdownの表形式(|---|)は使用せず、純粋なテキストとして出力してください。

列名:
タスク名 [TAB] 担当者 [TAB] 期限 [TAB] 優先度 [TAB] 備考

# ルール
1. タスク名:具体的かつ簡潔に。
2. 担当者:テキスト内に明記がない場合は「未定」とする。
3. 期限:テキスト内の表現を「YYYY/MM/DD」形式に変換する。日付が不明な場合は「未定」とする。
4. 優先度:テキストから推測し、「高・中・低」のいずれかで記載する。
5. 備考:補足事項があれば記載し、なければ空欄とする。
6. 項目が不足している場合でも、列の順番は必ず守ること。

# 未整理のテキスト
(ここに、チャットのコピーやメモを貼り付ける)

使い方の手順

  1. 上記のプロンプトをコピーして、AIのチャット欄に貼り付けます。
  2. (ここに、チャットのコピーやメモを貼り付ける) の部分に、先ほど「匿名化」したテキストを貼り付けます。
  3. AIが生成した、タブ区切りのテキストをコピーします。
  4. Excelを開き、貼り付けたいセルを選択して「貼り付け」を行います。

これだけで、バラバラだった指示が、Excelの各セルに綺麗に収まった状態で展開されます。

「うまくいかない」を防ぐためのチェックポイント

AIは万能ではありません。私が過去に失敗したパターンから、注意すべき点を挙げます。

1. 日付の「勝手な解釈」に注意

これが一番怖いです。例えば、チャットに「来週の火曜まで」とあった場合、AIは「今日が何日か」を基準に日付を計算しようとしますが、時として間違えます。
AIが出力した日付が、本当に意図したものか、必ず目視で確認してください。

2. 「不明」を「捏造」させない

AIは、空欄を嫌う性質があります。指示文で「不明な場合は『未定』と書け」と明示していないと、それっぽい日付や担当者を勝手に作り出す(ハルシネーション)ことがあります。
「わからないことは、書かない、あるいは『不明』と書く」というルールを、プロンプトの中に必ず組み込んでください。

3. 複雑すぎる指示を一度にさせない

「タスクを整理して、さらにその優先順位の理由も書いて、最後に関連部署へのメール文案も作って」
……これは、失敗の元です。一度に多くのことを頼むと、出力の精度が目に見えて落ちます。
「まずは整理させる」「次に、整理されたデータをもとにメールを作る」と、工程を分けるのが、結局一番早いです。

迷った時の使い分け:抽出か、要約か

「AIに何をさせればいいのか」で迷ったら、目的を以下のどちらかに絞ってください。

目的やること向いているケース
構造化(抽出)散らばった要素を、決まった列に分けるタスク管理表、顧客リスト作成、経費精算の整理
要約(圧縮)長い文章の、重要なポイントだけを残す会議録のサマリー作成、長いメールの把握

もし、あなたが「Excelに貼り付けたい」と思っているなら、やるべきは「構造化」です。

最後に

この方法を使えば、田島君の雑なチャットも、小林さんの厳しいチェックにも耐えうる、整ったデータへと変貌します。

ただ、一つだけ忘れないでください。AIが出した結果は、あくまで「下書き」です。最後にそのデータを「信じていいか」を判断するのは、Excel職人の勘を持つ、あなた自身です。

さて、私はこの後、AIに整理させたタスクリストを基に、部長への報告用スライドを作らなければなりません。これも、また別の「型」を使って片付けるつもりです。