「ルール通りに書けているか」の不安を、AIによる社内規定との照合でなくす

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「ルール通りに書けているか」の不安を、AIによる社内規定との照合でなくす

「これで、規定通りに書けているだろうか……」

そんな不安を抱えながら、分厚いPDFの社内規定と、自分の作成した報告書や契約書案を何度も往復する。そんな作業に、気づけば1時間、2時間が溶けていく。

特に、新しい規定が適用された直後や、経理の小林さんのように「表記ひとつ、数字ひとつで差し戻す」タイプの人がチェック担当についているときは、気が休まりません。自分では完璧に書いたつもりでも、どこかに「うっかり」が混じっているのではないか。その恐怖が、作業の手を止めてしまう。

結論から言うと、その「照合」という作業は、AIに任せられます。

AIに「ルール(規定)」と「答え(下書き)」の両方を渡して、「ルールに反しているところを、リストアップしてくれ」と頼むだけです。人間がルールを読み込むのではなく、AIにルールを読み込ませて、自分の書いたものと突き合わせさせる。この「逆転の発想」で、確認作業の心理的ハードルはかなり下がります。

データを渡す前に「伏せ字」にするルール

まず、大前提として、社外のAI(ChatGPTなど)にデータを渡す際の作法について。これは情シスの及川さんにも「ちゃんとやれよ」と釘を刺される部分です。

会社の規定で「外部AIへの入力」が許可されているか、必ず事前に確認してください。許可されている前提で、以下の「情報の置き換え」を徹底します。

単に「消す」だけでは、AIが文脈を理解できず、精度の低い回答が返ってきます。重要なのは、「情報の性質(前後関係)」を保ったまま、固有名詞を置き換えることです。

元の情報置き換え後の例理由
株式会社〇〇(取引先名)取引先A固有名詞を隠しつつ、組織であることを示す
1,250,000円(具体的な金額)1,250,000円(※金額の桁数は維持)規定に「100万円以上は要承認」とある場合、桁数は重要
2024年4月15日(特定の日付)2024年4月中旬期限の前後関係を維持するために、日付ではなく時期にする
山田太郎(個人名)担当者A個人の特定を防ぎつつ、役割を示す

このように、「何についての情報か」という構造を残したまま、中身を抽象化するのがコツです。

2つのアプローチ:チャット形式か、リスト抽出か

AIにチェックを頼むとき、やり方は大きく分けて2つあります。

方法A:会話形式で「これ、大丈夫かな?」と聞く
「この下書きは、規定に違反していませんか?」とチャットで聞く方法です。これは、作成の途中で「ちょっとした違和感」を解消したいときに適しています。

方法B:指示を出して「不備リスト」を作らせる
「不備がある箇所を、理由と一緒に表形式で出して」と指示する方法です。こちらは、最終的な提出前の「検品」として使います。

使い分けの結論としては、「迷ったら方法B」です。
方法Aは、AIが「大丈夫ですよ」と、それっぽく、しかし根拠の薄い返答(ハルシネーション)をしてしまうリスクがあります。一方、方法Bのように「出力形式」を指定してリスト化させる方法は、AIに「間違いを探す」という明確なタスクを課すことになるため、精度が安定しやすいのです。

実践:そのまま使える「検品プロンプト」

では、実際に使える指示文(プロンプト)を紹介します。
以下のテキストをコピーして、`[ ]` の部分を書き換えてからAIに貼り付けてください。

# 命令書
あなたは、企業のコンプライアンスおよび文書管理に精通した熟練の監査担当者です。
提供する【社内規定】の内容を厳格に遵守し、【作成した下書き】の内容をチェックしてください。

# タスク
【作成した下書き】の中に、【社内規定】に抵触する表現、不足している必須項目、または規定と矛盾する記述がないか確認してください。

# 出力形式
以下の項目をタブ区切り(TSV形式)で出力してください。Excelにそのまま貼り付けられるようにしてください。
項目名:該当箇所[タブ]違反・不備の理由[タブ]修正案[タブ]重要度(高・中・低)

# 社内規定
[ここに規定のテキストを貼り付ける]

# 作成した下書き
[ここに下書きのテキストを貼り付ける]

※出力された結果は、Excelやスプレッドシートのセルにそのまま貼り付けられます。

Excelへの戻し方と、出力の扱い

AIから「TSV形式で出して」と指示しておけば、結果はタブ区切りのテキストで返ってきます。

  1. AIが回答したテキストの、表の部分だけをコピーする。
  2. Excelを開き、貼り付けたいセルを選択して Ctrl + V
  3. これだけで、各項目が「該当箇所」「理由」「修正案」「重要度」の列に綺麗に分かれて入ります。

ここで一つ、実務的なアドバイスです。
AIが「不明」とした箇所や、判断に迷ったような回答を出してきた場合は、無理にExcel上で埋めようとせず、「AI判定保留」という列を自分で作って管理するのが、結局一番早いです。

こうするとうまくいかない:失敗のパターン

私が以前、新しい経費精算のルールに基づいて、部下の申請書をチェックさせようとしたときに陥った失敗があります。

それは、「規定が曖昧すぎる状態で、AIに丸投げすること」です。

規定に「適切な金額であること」としか書いていない場合、AIは「適切かどうか判断できません」と言うか、あるいは「適切です」と、根拠なく答えてしまいます。AIは「ルール」を「ルール」として読み込みますが、ルール自体に「解釈の余地」が多すぎると、チェック機能が働きません。

AIに投げる前に、規定のテキストが「もし、これを見た人が迷ったら、どう判断すべきか」というレベルまで明確であるかを確認してください。もし規定がボヤけているなら、AIにチェックさせる前に、まずその規定自体を整理する(あるいは上司に確認する)必要があります。

まとめ

AIによる照合は、魔法ではありません。しかし、「規定を読み返して、自分の文章と見比べる」という、精神を削る作業を、大幅に軽減してくれるツールにはなります。

  1. データを抽象化して、安全に渡す。
  2. 「リスト化」を指示して、検品作業にする。
  3. ExcelへTSVで戻し、人間は「AIの判断」を最終確認する。

まずは、明日届く、あるいは明日作る、ちょっとした報告書のチェックから試してみてください。

さて、私もさっきAIに作った議事録の整合性をチェックさせていたのですが、「重要度:低」として指摘された箇所が、実は部長が一番気にしているポイントだったことがわかりました。AIを過信せず、最後に自分の目で見る。これが、結局一番の近道なのかもしれません。